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映画『火花』(ネタバレ注意)

『火花』観てきました。

予告映像で、若い二人が歌うビートたけし作詞作曲の「浅草キッド」が、嘘みたいにカッコ良くて、
板尾釧路監督が、この映画にこの曲を使いたかった心を思うだけでシビレました。

文学青年の又吉が初めて書ききった小説が、芥川賞を受賞して、
それこそ映画みたいな展開です。
小説が先か、映画が先か、悩ましいところですが、
小説が先だと自分の中のイメージが出来上がってしまうため、
映画に不満を感じることが多いので、
最近は、映画を見てから本を読むことが多いです。

次々と小説やマンガを原作とした映像作品が上映されるので、とても追いつかないですが、
文字やマンガが映画という手法で動き出す感じは、現代の最高の贅沢だと思います。
映画館の椅子に身をうずめて、始まりを待つ感じが好きです。

大学でお世話になった細川周平先生が、学生の昼休みを利用して
映画ゼミなるものを開いてくださいました。
細川先生は、不思議なご経歴の方で、そのお仕事を書くと延々終わらないので別の機会にしますが、
現在京都在住(のはず)で、ブラジルの日系移民についてのご研究の本が一番ぶ厚いですが、
ポピュラー音楽やサッカーや文学やコンテンポラリーダンスなどなど、玉手箱のような方です。
何か国語を話されるのか、ずっと謎なのです。

その細川先生が、ゼミの冒頭に、
「映画を家で見るのは、温泉の素でお風呂に入るようなものなので、ぜひ映画館に足を運んでもらいたい」ということをおっしゃっていたことを思い出します。
そのゼミは、課題映画~社会派のものが多かったです~をそれぞれが観てきて、
感想文をA4、1枚にまとめて、みんなで共有するというものでした。

まず、通常、優先順位の後回しになる社会派の映画を見る習慣ができたことがよかったです。
歴史上の事件を丁寧に紐解き、映像化する作業は、大変な情熱とエネルギーのいることで、
そういう映画をつくり続けていくことの意味と価値を認識しました。
そして、感想文を1000~1600文字、書くことを鍛えられました。
だいたい映画は観っ放しですよね。
さらに、一番の衝撃は、同じ映画を観て、こんなに見るところ、感じるところが違うのか、
ということの発見でした。そのことが映画よりおもしろかったです。

『火花』は、人が5年、10年、20年大切にしてきたこと、がんばってきたこと、が、
一つも無駄じゃないっていうことを感じさせてくれる映画でした。
あまりうまくいかなかったこと、続けられなかったことも、大事な自分の一部なんだ、と
思わせてくれる何かがあったと思います。
仕事、家族、スポーツ、音楽、闘病生活、人間関係、などなど、
自分がエネルギーを燃やしたり、たいへんだったことを
その後の人生にどう連れていくか、なのだと思います。

「文学」は、あまり得意ではないけど、
カズオ・イシグロのノーベル賞スピーチのすばらしさと合わせて、
文学の力を信じてみようと思いました。

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